公的介護保険 その①【誰が加入して、どうなれば利用できる?】
まずは、公的介護保険(以下、介護保険)について、全5回にわたり解説します。
- その①【誰が加入して、どうなれば利用できる?】
- その②【要介護認定とは?】
- その③【介護サービスの種類(在宅/施設)】
- その④【在宅介護とお金】
- その⑤【施設介護とお金】
初回は、介護保険は誰が加入して、どうなれば利用できるのか?について解説します。
40歳以上の全国民が加入
介護保険は、40歳以上の方が加入し、被保険者となります。強制加入なので、私は必要なさそうだから加入しないという選択肢はありません。
皆さんが加入する健康保険と同様です。日本には国民皆保険制度がありますので、自営業者やその家族などが加入する国民健康保険、会社員などが加入する被用者保険(協会けんぽ、組合管掌健康保険など)、75歳以上の方が加入する後期高齢者医療制度、いずれかに加入する必要があります。
介護保険も同様に、必ず加入します。しかし、健康保険のように職業ごとに加入先(=保険者(運営機関)と呼びます)が異なることはありません。保険者はお住まいの各市町村、1つだけです。
ただし、年齢によって、第1号/第2号被保険者という区分があります。
第1号/第2号被保険者とは
介護保険では、65歳以上の方を第1号被保険者、40~65歳未満の方を第2号被保険者と区分しています。
介護「保険」ですから、当然、保険料を納める必要があります。65歳以上の第1号被保険者については、年金を年間18万円以上受給している方は年金から天引き、65歳未満の第2号被保険者については、加入している健康保険の保険料と合わせて徴収されます。
第1号/第2号被保険者とも受けられる介護サービスは同じです。では、呼び方や、保険料の徴収方法が異なるだけでしょうか?
そうではありません、大きく異なる点があります。それは、介護サービスを受けられる「条件」です。以下で詳しく解説します。
介護サービスを受ける(利用者となる)には、要介護認定が必要
介護保険は、ただ保険料を支払うだけでは、介護サービスを受けられません。
介護保険を利用する側になるには、「要介護状態」と認定される必要があります。要介護認定には、要支援1~2、要介護1~5の7段階があります(それぞれがどのような状態か?については次の記事で紹介します)。要介護認定を受けるには、各市町村への申請が必要です。
要介護(要支援含む)の認定を受けると、介護サービスを1割負担で利用できるようになります*1。たまに、介護状態になると給付金を受けられるようになる(現金をもらえる)、と思っている方がいますが、そうではありません。
健康保険はどうでしょうか?
たとえば、30歳の方であれば、病院に行って治療を受けた場合、窓口での治療費の負担が3割で済みます。これと同様です。
介護サービスを受けたとき、その費用の負担が1割で済む、ということです。
そして、前述の通り、介護サービスを受けられるようになるための条件が、65歳以上の第1号と、65歳未満の第2号で大きく異なります。
65歳以上の第1号は要介護(支援)状態になれば、その状態になった原因にかかわらず介護サービスを受けられます。一方で、65歳未満の第2号は要介護(支援)状態になった原因が、特定の病気*2である場合に限られます。
したがって、たとえば、50歳の方が事故などのケガで介護が必要になっても、介護サービスを受けることはできません。
65歳以上と、65歳未満では、介護保険で守られる範囲が大きく異なります。
介護に備えるために、まずはこの違いをしっかりと覚えておきましょう。
まとめ
公的介護保険その①として、介護保険には誰が加入して、どうなれば利用できるようになるのか、概要を理解頂けたかと思います。
参考までに、介護が必要になった原因で多いものは何かご存じでしょうか?
下図の通り、1位は「認知症」、2位は「脳血管疾患」、3位は「高齢による衰弱」です*3。やはり、多くは加齢に伴うものです。
一方で、若い方が転倒などの事故により介護が必要になる可能性もゼロではありません。
今、自分が事故や病気で介護状態になったら、介護保険が使えるのかどうか?想像してみましょう。
介護状態になったら誰でも介護保険が使えるわけではなく、年齢や病気の種類によって条件があることを知っておきましょう。
次回は、要介護状態とはどのような状態なのか?について解説します。
*1:原則1割ですが、収入に応じて2割または3割負担になります。全体の9割以上の方が1割負担に該当していますので、このブログでは多くの箇所で「1割負担」と記していることご留意ください。実際の負担割合は収入に応じて異なります。
*2:16種類の特定疾病;①がん(末期がん)、②関節リウマチ、③筋萎縮性側索硬化症(ALS)、④後縦靭帯骨化症、⑤骨折を伴う骨粗鬆症、⑥初老期における認知症、⑦進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病(パーキンソン病関連疾患)、⑧脊髄小脳変性症、⑨脊柱管狭窄症、⑩早老症、⑪多系統萎縮症、⑫糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症、⑬脳血管疾患、⑭閉塞性動脈硬化症、⑮慢性閉塞性肺疾患、⑯両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症