介護にかかるお金の話

鹿児島県鹿屋市在住のファイナンシャルプランナーが、人生100年時代への備え方、主に「介護にかかるお金」をテーマに発信しています。

公的介護保険 その⑤【施設介護とお金】

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「介護が必要になったら家族に負担を掛けたくないし、施設でプロにお世話をしてもらいたい」

 

 最後まで家で過ごしたいという方もいらっしゃれば、反対に介護状態になったら施設に入所したいと考える方もいらっしゃると思います。また、できれば家で過ごしたいと考えていたものの、介護する側の家族が身体的・精神的に限界になり、施設への入所を検討し始める方もいらっしゃると思います。一般的に、施設介護は在宅介護よりお金がかかります。 

 

今回は、「施設介護とお金」について解説します。

 

 

施設サービスの種類

 

公的介護保険(以下、介護保険)の「施設サービス」に指定されている介護保険施設は以下の4つがあります。いずれの施設も、要支援の方は入所できず、要介護1以上の方が対象になります。

  • 特別養護老人ホーム(特養)【要介護~5】
    常に介護が必要で、在宅での生活が困難な方を対象としています。原則として、要介護3以上の方が対象です。
  • 介護老人保健施設老健【要介護1~5】
    病状が安定している方が、リハビリを中心とした介護を受け、在宅復帰を目指す施設です。
  • 介護医療院【要介護1~5】
    慢性疾患などで長期療養を必要とする方が、医療・介護サービスの両方を複合的に受けることができる施設です。
  • 介護療養型医療施設【要介護1~5】
    急性期の治療を終え、長期療養を必要とする方が、医療を中心に、介護サービスを受けることのできる病院です(令和5年度末までに廃止予定で、介護医療院がその受け皿として位置付けられています)。

介護関連の施設には、この他にグループホーム認知症対応型共同生活介護)がありますが、これは「施設サービス」ではなく、「地域密着型サービス」に分類されています。他にも、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などの施設がありますが、これらも「施設サービス」には位置付けられておらず、これらの施設で受ける介護サービスは、「在宅サービス」に分類されています。

 

「施設サービス」に分類される上述の4つの介護保険施設は、比較的費用が安いので人気です。特に、特別養護老人ホーム(特養)は人気が高く、申し込んでから実際に入所するまでに数年かかる場合があります。入所も申込順ではなく、入所の必要性の高い方が優先されます。したがって、入所したいと考えていたとしても、必ずしも希望通りの入所が叶わない場合もあります。

 

施設サービスに必要な費用は?

 

「施設サービス」に分類される介護保険施設に入所する場合、「施設サービス費」と呼ばれる利用料を負担します。利用料は要介護度や施設・居室タイプに応じて異なりますが、利用者は施設サービス費の1割を負担します。この他に、食費、(居室タイプに応じた)居住費日常生活費(理美容代、私物の洗濯代など)等がかかりますが、これらは全額自己負担となります。

 

以下は、各介護保険施設での要介護度別平均利用料(月額)を示した表です*1

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介護保険施設での要介護度別平均利用料(月額)

  比較的費用の安いと言われている介護保険施設でも、これくらいの利用料が必要です。

これらの施設が順番待ちで空室がない場合や、要介護度や入所の条件を満たさない場合などは、民間の介護施設、たとえば有料老人ホームなどが選択肢になってきます。介護保険施設に比べると月々の費用は高額で、多くの場合、入居時に数十万円~高いところでは数千万円の入居一時金が必要となります。

 

実際、どれくらい必要?

 

では、施設での介護経験のある方が、実際に支払った金額はどのくらいなのでしょうか?

前回の「在宅介護とお金」の記事でもご紹介した、公益財団法人生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」によれば、公的/民間を合わせた施設介護の平均で11.8万円/月となっています。さらに細かく見れば、「公的な老人福祉施設老人保健施設」では9.9万円/月、「病院」では9.2万円、「民間の有料老人ホームなど」では13.8万円/月となっています。

 

同様の調査で、介護期間の平均は54.5ヶ月(4年7ヶ月)なので、単純計算すると、施設介護の場合、月々の費用総額は約650万円にも上ります。

 

介護期間が予想以上に長引いた場合など、介護破産になってしまう可能性もあります。施設介護を望む場合は、十分なお金をきちんと用意しておきましょう

 

まとめ

 

 今回は、「施設介護とお金」について解説しました。

 

介護施設の最大のメリットは、なんと言っても「安心感」です。在宅に比べて長時間、施設によっては24時間常にプロによる介護を受けられる安心感があります。家族の介護の負担もほとんどありません。

ただし、その安心感と引き換えに必要なお金は在宅介護よりも大きくなります

将来、自分がどこで、どのような介護を受けたいのか、方針を家族でよく話し合っておくことが大切です。

 

介護保険について、全5回にわたり、概要を解説しました。

制度の細かな部分や、紹介しきれていない制度などもありますが、将来の介護への備えとしては、まずはこの程度の大枠を理解しておくだけで十分です。

このブログを読む前は、「介護保険料払ってはいるが、よくわからない」、「介護に一体いくらくらいかかるのか想像もつかない」というイメージを持っていた方も多いと思います。

介護への備えの第一歩は、介護を「知る」ことからです。

このブログが、ほんの少しだけでもその役割を担えることを祈り、今後もさまざまな記事を発信していきます。

*1:厚生労働省「平成28年介護サービス施設・事業所調査」より。