介護にかかるお金の話

鹿児島県鹿屋市在住のファイナンシャルプランナーが、人生100年時代への備え方、主に「介護にかかるお金」をテーマに発信しています。

介護資金の備え方

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介護状態になった場合に備えて、経済的な準備をしておきましょう。

今回は、準備をするうえで知っておきたいことや、準備手段、について解説します。

 

 

介護資金の準備をするうえで知っておきたいこと

 

まず、 大切なことが3つあります。

  1. 絶対に準備資金に手を付けないこと。
  2. 可能な限り早いタイミングで準備を開始すること。
  3. 子供や家族に伝えておくこと。

なぜこれらが重要なのでしょうか?

  • 絶対に準備資金に手をつけないこと。
    「介護」というのは、自分が元気なうちはなかなかピンとこないものです。たとえば、介護資金として1人500万円、夫婦2人分で1,000万円を準備したとします。せっかく用意した準備資金も、少しならと思って家のリフォームや家族旅行など、誘惑に負けて使ってしまっては、後で困るときがやってきます「まあ使ってしまっても、何とかなるだろう」という楽観的な考えは捨てましょう。自分が困るだけでなく、家族を困らせることになります。

  • 可能な限り早いタイミングで準備を開始すること。
    当たり前ですが、お金の準備というのは早く始めるに越したことはありません。例えば、70歳までに同じ1,000万円を貯金するとして、40歳から30年間貯金する場合は約27,800円/月で済みますが、60歳から10年間貯金する場合は約83,400円/月が必要です。準備が遅くなればなるほど、後で非常に急な上り坂を駆け足で登らなければなりません。可能な限り早いタイミングから、ゆっくりと一歩ずつ登り続けることが大切です。

  • 子供や家族に伝えておくこと。
    せっかく準備をしているなら、そのことを子供や家族に伝えておきましょう。まだ先のことだと思っていたのに、突然の事故や病気で介護状態となり、自分の希望や、せっかく用意しておいた資金について、十分に伝えられなくなるかもしれません。自分が介護状態になったら、どこで誰にどのように介護してもらいたいのか、そしてその資金についてはどのような準備をしているのか、子供や家族に伝えておきましょう

 

介護資金の準備手段

 

 生命保険文化センター「令和元年度生活保障に関する調査」によれば、自分が介護状態になった場合に備えて、経済的な準備をしている方の割合は48.7%となっています。準備している方のうち、具体的な準備手段を尋ねると、「預貯金」が最も多く、次いで「生命保険」となっています(下図)。

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介護資金を準備している方の準備手段(複数回答)

割合の最も多い預貯金については、引き出しや使い道が自由であることが最大のメリットです。例えば大きな病気に掛かった場合など、どうしてもお金が必要な場合があるかもしれません。将来の介護ではなく、いま、命を守るためにお金が必要といった場合には、預貯金を切り崩すことができます。そういった特別な事情を除いては、簡単に引き出しできることはデメリットにもなり得ます。介護資金用の口座を用意して、定期預金に預けるなどして、手をつけないお金として管理しておくのが良いでしょう。

 

次に割合の多い生命保険については、介護保障を主とする介護保険医療保険や死亡保険などの特約として介護を保障するものがあります。保険料を支払いさえすれば、その時点から保障が得られることが最大のメリットです。貯金は時間が掛かりますが、保険はその時点から保障が開始され、介護状態になれば決められた金額が支払われます。保険期間が終身であれば、一生涯の介護リスクに備えることができます。また、貯金と違い途中で使ってしまう心配がないので、必要な時まできちんとお金を残しておくことができます。反対に、自由に引き出しができないことはデメリットになります。

 

必ずこの手段で準備するのが良い、ということを言いたいのではありません。どの手段を選択するにせよ、「このお金は介護用の資金」と明確に色分けをして、管理をしておくことが大切です。

 

計画的に資金を貯める方法としては、給料からの「天引き」が有です。月々の給料から貯金分が強制的に引き去られ、残ったお金で生活を回します。

月々の残ったお金を貯金に回すやり方は、よっぽど意思が固くて、細かく丁寧な管理ができる方でなければ、なかなか計画通りにはいきません。

生命保険の場合は月々の支払いがあるので、天引きと同じような強制力があります。

 

また、当然のことながら、年金も大切な要素です。

老後生活の家計の中心は年金です。しかし、普段の生活でさえ年金だけでは赤字の家庭が多い高齢者世帯で、そこに介護が発生すれば、介護保険の自己負担1割でさえ家計を圧迫します。

「介護になれば、他でお金を使わないのだから年金は余るでしょ」とおっしゃる方がいますが、本当にそうでしょうか?

特に、夫婦どちらかだけが介護になった場合、配偶者の生活費は変わらず必要です。毎日ゴルフに出かけている、ショッピングが好き、お友達と連日ランチ・ディナーに行かれている方などが介護状態になると、生活費は大きく変わるかもしれません。そうでない場合は、それほど大きく変わるとは思えません。

年金をあてにしすぎるよりは、介護費用は月々の費用に上乗せでかかる性格のもの、と考えておく方が安全です。

 

介護は自分のお金で

 

最後に、介護への備えについて、もう1つ大切なポイントがあります。それは、「介護にかかるお金は自分のお金で」ということです。

 

まったく用意していないまま、突然、介護が必要になってしまったら…

親のお金だけで足りなくなったら、特に遠方に住んでいる子供はせめて経済的な負担だけでも、とお金を負担しようとすることが少なくありません。自分の親なので、子供たちも当然のように、お父さん、お母さんが少しでも快適に暮らせるようにと、お金を惜しみなく出してくれると思います。

 

でも、それで良いのでしょうか?

子供たちも本来であれば貯金や老後資産を築くために使えたはずのお金を、親の介護のために使わなければなりません。その生活が長引けば、今度は自分たちの老後資金、介護資金を準備できず、子供の介護はまたその子供が…という連鎖を生んでしまうかもしれません。

経済的な負担をしない代わりに、介護のために子供が離職することもあります。「介護離職」は、その方が本来得られたはずの給料や退職金などの利益を手放すことになり、同じく老後資金、介護資金の準備に大きく影響します。

 

自分はどのような介護を受けたいのかを具体的に想像して、それに必要な資金を自分で用意することが大切です。

 

 

まとめ

 

今回は、介護資金の備え方について、紹介しました。

元気なうちは、多くの方が「家族に迷惑をかけたくない」と思っているはずです。

いざ、介護が必要となったときに、意思に反した結果とならないように、介護のリスクと真剣に向き合い、早めに準備をはじめましょう。

 

最後に、少子高齢化にある日本は、社会保障制度の持続が深刻な問題となっています。

高齢者が増えて、現役世代が減っていく時代にあって、介護保険も利用者の自己負担額の引き上げや、給付内容の見直し(抑制)が議論になっています。

老後資金の準備にあたっては、自己負担額は増す方向であり、今後はますますの自助努力が必要と考えておいた方が安全です。